09世界選手権のジャッジについて その8
------前回の復習------
次いで、09世界選手権と08世界選手権のFSに進んだ24選手(08は棄権の安藤美姫を除く23名)のフリーのTESとPCSを比べてみた。
TES PCS 平均 TES PCS PCS/TES
08FS 1110.89 1082.33 48.30 47.06 0.974
09FS 1155.81 1183.84 48.16 49.33 1.024
こちらは・・・
09のTESが08に対して微減(-0.141、-0.3%)しているのに、PCSははっきりと増えている(+2.269、+4.8%)。結果、TESに対するPCSの割合は、09が、5.0%も増え、08ではTESより低かったPCSが、09ではTESを上回っている。やはり、09WCは、08WCに比べても、フリーでのPCSが「異常に」高くなったということか・・・。
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悪児も、一瞬、そう思ったのだが、直ぐにあることに気づいた。
そう、08WCは、今シーズンに比べて要素(スピン)が1つ多かったのだ。言い換えれば、09WCは08WCに比べて、要素数が1つ減って、要素点の積み重ねであるTESは(基礎点がアップされた要素はあったものの3A以上のジャンプ以外は大差なく)その分低く抑えられることになったのである。つまり、そのまま比較したのでは、比較にならず、どちらかのTESを補正しなくてはならないということだ。スピン1回。低めに見て、基礎点+GOEで、3.0。それを09WCのTESにプラスしてみると・・・
TES PCS 平均 TES PCS PCS/TES
08FS 1110.89 1082.33 48.30 47.06 0.974
09FS 1227.81 1183.84 51.16 49.33 0.964
TESに対するPCSの割合は、09が、1.0%減。減少は減少だけど、数字的には、ほとんど変わらない、といって良い。得点そのものも、どちらも、09の方が08より高くなる。TESは、+2.86で、PCSは、+2.27。率にすると、TESが+5.9%で、PCSは+4.8%。これは明らかにどちらも上がっていてTESの方がPCSよりむしろ上がっている(+1.1%)。
これをグラフにしてみると(TESの点数を一律3.00プラスする)、次のようになる。
本来のスコアでは真央のところでTESを上回っていたPCSが、TESを上回らずに推移し、最後にヨナの得点で、TESを上回ることになる。要するに、PCSがTESを上回ったのがPCSインフレ説のよりどころだと思うが、次の3つの理由からPCSインフレ説は退けられることになる。
1.09WCのPCSはGPSのPCSより高く出たが、それは相対評価であるためにWC等多人数でレベル差のある大会ではよくあること(08WCと同じ)で、特にインフレとはいえない。
2.08WCでもPCSがTESを上回る選手はほとんどいなかったのに、09WCのフリースタイルでは、多くの選手でPCSがTESを上回った。しかし、それは09WCでは08WCに比べて要素数(スピン)が1つ減ったためTESが下がったからで、その分を補正してみると、おおむねPCSはTESより下回ることになり、08WCに比べてインフレであるとはいえない。
3.PCS自体も高くなっているが、ほぼ同じ比率でTESも上がっているのであり、この上昇分は採点側の問題というより、選手たちの演技のレベルが向上したからだと見るのが自然。
しかし、それにもかかわらず、まだ一つだけ、問題が残る。ヨナの点である。FSのTES 63.19に対し、PCS 68.4。要素数分の補正をしても、TES 66.19に対しPCS 68.4。まだ、PCSの方が2.21も高い。やはり、ヨナのPCSは・・・(続く)
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