トリプルアクセルの価値 その2(フィギュアスケートプロトコル分析)
もちろん、その理由ははっきりしている。アクセルジャンプがダブルアクセルに限定されていることが問題なのだ。これが男子並みにダブルもしくはトリプルアクセルとなれば、真央ちゃんのジャンプ構成は、
3Lz 6.0 → 3Lo 5.0 (-1.0)
3F 5.5
2A 3.5 → 3A 8.2 (+4.7)
2T 1.3 → 2Lo 1.5 (+0.2)
と、苦手の3Lz を回避しても標準より+3.9の20.2になるのだ。3Lzを入れれば、さらに+1.0で21.2になる。
女子のSPのアクセルジャンプがダブル限定となっているのは、トリプルを跳べる選手がほとんどいなかったこと、従って、トリプルを解禁したらその選手が非常に有利になってしまうから、というのは理解できる。一方3-3の方は、回転不足を厳しく取られるまでは、女子のトップ選手ならほとんど跳べると思われていた。従って、3-2に限定されていないことも理解できる。
ところが、回転不足の厳密化によって、様相が変わってしまった。真央ちゃんのトリプルアクセルがほとんど真央ちゃんしか跳べないジャンプとして真央ちゃんの大きな武器になっているのに対し、よなちゃんの高難度ジャンプからの3-3も、決して「トップ選手ならほとんど跳べる」ジャンプではなく、ほとんどヨナちゃん1人しか「コンスタントに跳べないジャンプ」になってヨナちゃんの大きな武器となってしまったのだ。詳しくは、「3Aと3-3 その1-その6(こちらから)」をご覧下さい。
その大きな武器の一方(真央ちゃんの3A)はそのメリットを大きく消されて(2A→3Aの+4.7ではなく3F→3Aの+2.7だけに)、もう一方(ヨナちゃんの3-3)はそのメリットを十分に生かせる(2T→3Tの+2.7そのまま)ために、得点上全く同じ価値になってしまっているというのは、やはり大きな問題だろう。もちろん、そうなってしまった歴史的経緯は納得できるので、それを「陰謀」とする主張に組する気は全くないが、早急に改善する必要があるのではないか。
というわけで、現在の規定では、SPに3Aを入れるメリット(基礎点の上昇)はほとんどなく、ハイリスク、というデメリットだけが残ってしまう。シーズン当初の失敗の連続を乗り越えて本番で見事に成功させた真央ちゃんの努力・集中力は見事としかいいようがないが、それによって得られた得点はあまりに少なかっただけではなく、他のジャンプの練習不足→他のジャンプの失敗&GOE減少という大きなデメリットを負ってしまったのだ。
フィギュアスケート各種プロトコル分析目次は → こちら
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